生活手紙文研究家 中川 越
自然災害に被災した人や会社、団体などに対して、年賀状を出すときには、相手の心情を傷つけないために、細心の注意が必要です。そして、できることなら、明るい希望を感じさせる文面を送るようにしたいものです。
また、被災した側が年賀状を送る際には、できるだけ元気、活力、明るさが感じられる文面で、相手を安心させる配慮が大切です。
そのような年賀状を送るために、ふまえておきたい注意点と、ふさわしい文面に仕上げるための参考例をご紹介します。
そもそも年賀状を送るべきでしょうか?
送るべきかどうかは、当然相手や自分の被災状況、そして考え方によります。どのような場合にどの形式で送るのが良いかを、以下の表にまとめました。
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形式 |
お送りする時期 |
| 被災された方へ送る場合 |
喪中欠礼状を受けたとき |
寒中見舞い |
1/8以降 |
| 特に大きな被害がなかったとき |
通常年賀状 |
1/1頃 |
死傷者はないが被害があったとき・
けが人がいるとき |
年始のご挨拶 |
1/1頃 |
| 被災された方から送る場合 |
喪中欠礼状を送ったとき |
寒中見舞い |
1/8以降 |
| いつも通りにしたいとき |
通常年賀状 |
1/1頃 |
同じ地域の被災者に配慮しながら、
いつも通りにしたいとき |
年始のご挨拶 |
1/1頃 |
「寒中見舞い」として送る
喪に服すべき状況なら、通常の礼儀に従い、喪中欠礼を通知し、年賀状は送らず、年が明けて松の内が終わる一月八日以降に、寒中見舞いを送り、年始のあいさつの代わりとするのが一般的です。相手や自分の被害が軽微であっても、地域全体が大きな被害を受け、場合によっては国全体が喪に服すべきと判断したときは、喪中欠礼の通知は出さず、寒中見舞いだけを出し、年始の挨拶に代えるのがよいでしょう。
<作成時の注意点>
- 賀詞は利用しません。
「賀」「年賀」「おめでとう」という語は使いません。「年賀」は「年始」と変えます。
「通常年賀状」として送る
被害が軽微で、いつも通りにしたいときは、年賀状を送ります。いつも通りにすれば、地域や国全体が活気を取り戻し、経済も活発になり、ひいては被災地のためになると考えることができるからです。ただし、いつも通りといっても、内容はおのずと節度あるものとします。はしゃぎすぎたものなどは、大災害の翌年などには、雰囲気的になじまず、ひんしゅくを買うこともありますので、注意が必要です。
<作成時の注意点>
- 文面には、一定の節度が必要です。
被災という大変な出来事があったということをふまえていないと思われる言葉がある文面は、絶対に避けなければなりません。
「年始のご挨拶」として送る
被害が軽微なので、年賀状を出したいと考えても、地域全体や国の大半が被災したような大災害の場合には、賀=喜び祝う、という気分になれないこともあります。とはいえ、元気を出してほしいし、元気を送りたいというときには、あえて「賀」という語を使わずに、「新年のご挨拶を申し上げます」などといった挨拶を、冒頭に掲げてから、相手の復興、幸福を願ったり、自分の鋭気を伝えたりする年始の挨拶状を、年賀状に代えて出すのがいいでしょう。
<作成時の注意点>
- 賀詞は利用しません。
「賀」という語は避け、冒頭に「年始のご挨拶を申し上げます」などと掲げます。
デザイン・文面に関する全般的な注意点
- デザインは礼儀を重んじた品位あるものに
奇をてらったり、浮かれた感じがしたり、デザインセンスを誇示するようなものは、ふさわしくないでしょう。
- 文章は縦書き
- フォントは明朝系を利用
ゴシック系を使う場合、太系は避けましょう。
- フォントの色は黒系統に
カラフルな色は違和感が出ます。
- 本文の字間・行間はほどよくゆったりと
狭いと、ゆとりある礼儀が薄れ、情報的な印象が増し、空きすぎれば、間が抜けた印象になります。
筆王での操作方法について
挿入した文章パーツをダブルクリックすると「書式設定バー」が表示され、文字の方向やフォント、色を変更することができます。
被災をふまえた年賀状、挨拶状の参考文例
これまでご紹介してきた、年賀状ならびに年始の挨拶状の具体的な参考例を、次に示します。ご利用になる際には、被災状況や相手との関係にふさわしいものとなるよう、適切に調整してください。
「寒中見舞い」の参考文例
《送り先→目上/同等/ビジネス》
寒中お見舞い申し上げます
新春とはいえ寒さが続いておりますが
皆様いかがお過ごしでしょうか
旧年中のご災厄を改めてお見舞い致し
本年のご再建ご繁栄を心よりお祈り申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
寒中のお見舞いを申し上げます
本年は年始のごあいさつを遠慮させていただき
寒中のご機嫌をおうかがい申し上げます
本年が皆様にとりまして光輝あふれる
すばらしい年になることを
心よりお祈り申し上げるしだいです
《送り先→目上/同等/ビジネス》
寒中謹んでお見舞い申し上げます
厳しい寒さが続いておりますが
皆様ご健勝のことと拝察いたします
今年は思う所あり年始のごあいさつを
ご遠慮させていただきました
本年の皆様のご多幸をお祈りいたします
《送り先→目上/同等》
厳寒の候いかがおすごしですか
御地の寒さのほどは いかがですか
お身体にさわらなければよいのですが
希望の新年となりました
一日ずつ少しずつきっとよくなります
なにかできることがあればお申しつけください
《送り先→同等/目下》
お寒い日が続いております
寒さの中その後いかがおすごしでしょうか
少しずつでもお元気を取り戻しつつあれば
とてもうれしく思います
何もできませんが遠くからいつも
応援しています
《送り先→目上/同等/ビジネス》
寒中お見舞い申し上げます
新春とは名ばかりの寒さですが
皆様にはご健勝のことと存じます
年が改まり心機一転なお一層頑張る所存です
本年もご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
寒中のお見舞いを申し上げます
昨年はなにかとご心配をいただき
ありがとうございました
お陰様で徐々にですが当地にも
復興の兆しも見えはじめてまいりました
まだまだ寒さが続きます
ご自愛くださるようお願い申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
寒中謹んでお見舞い申し上げます
いてつく寒さの毎日ですが
お元気でご活躍のこととお慶び申し上げます
当方は皆様のお励ましに支えられ
奮起する気力をみなぎらせておりますので
どうかご休心ください
昨年頂戴した格別のご芳情に
改めて感謝申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
酷寒のみぎり いかがお過ごしでしょうか
寒い時節となり皆様のご健康を案じております
こちらは全員それぞれ元の生活に戻り
元気にやっておりますので どうかご安心ください
右寒中のお見舞いまで申し上げます
《送り先→同等/目下》
炬燵の中からお伺いいたします
寒さ本番 炬燵からなかなか抜け出せません
そちらの冬はいかがですか
炬燵からは出られませんが
落胆からは抜け出て再建の決意です
いつもお気にかけてくださり感謝します
「通常年賀状」の参考文例
《送り先→目上/同等/ビジネス》
謹賀新年
本年のご再興ご躍進を
心よりお祈り申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
恭賀新年
旧年中のご心労を心からお慰め申し上げ
新年のご多祥をご祈念申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
謹んで新年のお祝いを申し上げます
昨年は困難な状況にもかかわらず
変わらぬご高配を賜り 恐縮至極に存じます
貴家(貴社)皆々様の本年のご躍進ご多幸を
家族(小社)一同心よりお祈り申し上げるしだいです
《送り先→同等/目下》
あけましておめでとうございます
年が改まりました
すべてのことを新しくスタートしましょう
必ずすばらしい年になると信じています
《送り先→同等/目下》
頌春
新しい春がめぐってきました
新しい幸せも またたくさん
めぐりくるでしょう
《送り先→目上/同等/ビジネス》
謹賀新年
旧年中の多大なるご支援を心よりお礼申し上げ
本年のあなた様(御社)のご多祥をお祈り申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
恭賀新年
昨年は物心ともにお力添えをたまわり
感謝の申し上げようもございません
改めて心から厚く御礼を申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
謹んで新年のお祝いを申し上げます
ようやく越年することができした
格別なご支援ご鞭撻のお陰です
感謝至極に存じます
貴家(貴社)ご家族様(皆々様)の本年のご活躍とお幸せを
お祈り申し上げます
《送り先→同等/目下》
あけましておめでとうございます
去年は大変な年でした
今年はぜったいすてきな年にしてみせます
応援してくださる皆様のためにも
たくさんのお心づかい
ありがとうございました
《送り先→同等/目下》
迎春
去年のことは去年まで
新しい新鮮な春のお出迎えです
春は希望をもたらすはずです
いろいろありがとう
「年始のご挨拶」の参考文例
《送り先→目上/同等/ビジネス》
新年のご挨拶を申し上げます
旧年中の格別のご厚恩に改めて深謝し
本年も引き続きご高配を賜りたく
謹んでお願い申し上げるとともに
あなた様(貴社)の本年のご活躍ご多祥を
心よりご祈念申し上げるしだいです
《送り先→目上/同等/ビジネス》
謹んで年始のご挨拶を申し上げます
貴家(貴社)におかれましては
困難な昨年を乗り超えられたことを
心より敬服するしだいです
本年貴家ご一統様(貴社ご一同様)に
輝かしいご多幸が訪れますよう
家族一同(弊社一同)お祈り申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
新春のごあいさつを申し上げます
貴地ご復興はなかなか進まず
未だに困難な日々が続いていることと承り
心よりご心配ご同情申し上げます
本年こそ復旧の目途が立ち
明るい日々が戻って来ることを
お祈り申し上げるしだいです
《送り先→目上/同等/ビジネス》
年頭にあたりごあいさつを申し上げます
昨年の災禍を改めてお見舞いを申し上げます
その後いかがでしょうか
復旧復興のために 皆様さぞかしご奮闘のことと存じます
十分ご自愛くださいませ
本年も何卒よろしくお願い申し上げます
《送り先→同等/目下》
新しい年のごあいさつをいたします
新しい年には 新たな気持ちが大切です
この一年のあなたの奮起奮闘を心から期待します
今年もよろしくお願いいたします
《送り先→目上/同等/ビジネス》
謹んで新年のご挨拶を申し上げます
旧年中は格別のご芳情を賜りました
改めて深甚の感謝を申し上げます
本年は皆様のご芳志を胸に
なお一層復興に向けて努力する所存です
引き続きご指導ご鞭撻くださるよう
お願い申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
年頭のご挨拶を申し上げます
昨年の災禍をふまえ
謹んで年頭のご挨拶を申し上げます
小宅(小社)の被害は甚大でしたが
今はもう旧に復し 以前通りの日々ですので
どうかご安心ください
貴家(貴社)ご一同様の本年のご繁栄を
心よりお祈り申し上げます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
元旦のごあいさつを申し上げます
未曽有の災害に意気消沈した一年でしたが
本年は心も新たに 勇躍として困難に立ち向かい
明るい未来を築くために 一同さらに鋭意努力する決意です
変わらぬご厚情ご厚誼を賜りますれば幸甚に存じます
《送り先→目上/同等/ビジネス》
年初にあたりごあいさつを申し上げます
昨年は早速ご支援くださり感謝の申し上げようもなく
ここに重ねて御礼申し上げるしだいです
その後状況は日増しに改善され
本年はきっとよい年になると思いますので
どうかご安心ください
本年もまたよろしくお願い申し上げます
《送り先→同等/目下》
新春のごあいさつをいたします
春が改まりました
新たな気持ちで前に進みます
振り返らないつもりです
勇気づけてくださり
本当にありがとうございました
執筆者紹介
中川 越〈なかがわ・えつ〉
古今東西、有名無名を問わず、さまざま手紙を収集・鑑賞し、主に生活手紙文のあり方を研究。夏目漱石など、歴史的文豪の手紙はもとより、一般の人々の手紙から子供の手紙に至るまで、多くの手紙を手がかりに、手紙の文例やエッセンスを紹介。 多彩な切り口による手紙関連の著作は、数十冊に及び、それらの著書を通じて、手紙のよさを紹介。
略歴
出身地:東京都
1954年生れ
大学卒業後、雑誌・書籍編集者を経て、執筆活動に入る。
主な著書
『文豪たちの手紙の奥義―ラブレターから借金依頼まで―』(新潮文庫・新潮社)
『気持ちが伝わる手紙・はがきの書き方全集』(PHPビジュアル実用BOOKS・PHP研究所)
『年賀状のちから―年賀状にまつわる65のストーリー』(CKパブリッシング)
『すべての仕事で使える文書大事典―そのままうつせる』(永岡書店)
「年始のご挨拶」テンプレート追加のお知らせ
12/2(金)に、「年始のご挨拶」テンプレート10点を追加しました。
「筆王素材パレット」の「年始のご挨拶」カテゴリからご利用いただけます。
追加素材の例
